毎日くだもの200グラムメールマガジン □■ くだもの&健康ニュース Vol.188 ■◇ 2019年8月30日(金)配信 こんにちは! 果物の摂取量を少しだけ増やすことで心血管疾患が大幅に減少する との予測が発表されました。 ───────────────────────────── 毎日くだもの200グラム以上食べましょう! 公式ホームページは下記です。 http://www.kudamono200.or.jp ────────────────────────────── <<< 本日のメニュ- >>> ・ 季節の便り ・ くだものレシピ:リンゴ ・ くだもの広場:種なしぶどうと植物ホルモン ・ 文献紹介:果物の摂取を増やす政策で、心血管疾患が大幅に減少 ・ 文学の中の果物:ニュートン(石原純) ・ くだものいちば ・ 編集部より ────────────────────────────── ■ 季節の便り   胃痛癒えて林檎の來る嬉しさよ     - 正岡子規 ────────────────────────────── ■ くだものレシピ:リンゴ ○ リンゴと豚肉の炊き込みカレーピラフ  生のリンゴを炊き込みます。酸味のあるリンゴとカレーがベスト マッチです! 材料(2人分)  リンゴ(出来れば紅玉) 小1個、干しブドウ 大匙1杯、豚スラ イス(ロースかモモ) 80g、玉葱 1/2個、ピーマン 小1個、米、カ レー粉、コンソメスープの素、バター、など。 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 https://cookpad.com/recipe/690698 ○ さんま カルパッチョ  サンマを刺身以外で 材料  リンゴ 1/3個、プルーン 4個、サンマ(刺身用) 1本、レタス 2枚、 バジル 6枚、オリーブオイル、塩、バジルオイル 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 https://cookpad.com/recipe/4075255 ────────────────────────────── ■ くだもの広場:種なしぶどうと植物ホルモン おじさん:つい先日に梅雨明けをして、梅雨明けと同時に日本中が  猛暑になったけど、今年は、お盆に台風がやってきて通り過ぎた  ら、暑さも和らいできたね。今は、どんな果物が美味しいかな。 リン:暑いから、どんな果物でも冷蔵庫で冷やして食べれば美味し  い時期だと思うけど、桃やぶどうが一番おいしい時期かな。 ミカ:もう、梨も出回り始めたね。世の中に出回っている果物の種  類で季節感を感じることができるね。 おじさん:桃とぶどうが美味しい時期ということだけど、今日はぶ  どうの「種」に関するお話しをしよう。桃は真ん中に大きな種が  あることはよく知っていると思うけど、ぶどうは、最近は、もっ  ぱら種なしのぶどうが多いね。種なしのぶどうは、もともと種が  ないんじゃなくて、植物ホルモンの1つである「ジベレリン」と  いうもので処理をすると、種なしぶどうになるんだ。 ミカ:植物ホルモンとか、ジベレリンとか、なんだか、難しそうな  言葉が出てきたけど、もう少し分かりやすく詳しく教えて欲しい  な。 おじさん:出来るだけ分かりやすくお話ししようと思うからよろし くね。まず、植物ホルモンとは、植物体内で作り出され、極微量 で植物の発生、成長などの過程を調節する機能を有する物質で、 植物が生きていくのに必要不可欠なものなんだ。現在、知られて いる代表的な植物ホルモンは、オーキシン、サイトカイニン、エ チレン、アブシジン酸、ジベレリンの5つがある。 これらの植物ホルモンには、様々な生理活性機能があるが、こ  のうち、ジベレリンの主な機能としては、①受精なしに果実を大  きくさせる作用、②芽や葉を伸ばす作用、③開花を早める作用、  ④休眠中の種子を発芽させる作用がある。このジベレリンの機能  のうち受精なしに果実を大きくさせる作用を利用し、ぶどうの房  をジベレリン液に浸すことにより、種なしぶどうを作っているん  だよ。種なしのデラウェアは、昭和30年代初頭から技術研究が  すすめられ、世の中に出回り始めたのは昭和35年で、その後、  急速に普及していくことになったんだ。 ジベレリンは、日本人が発見した植物ホルモンなんだ。1926  年(大正15年)に台湾総督府農事試験場の黒沢英一が稲の馬鹿苗 病(苗の丈がひょろっと長くなる病気)は、この病気の病原菌が作 る物質が原因であることを発見し、その後、1935年に東京大 学農学部の薮田貞治郎教授が、この病原菌の培養液から原因とな る物質を分離(単離)してジベレリンと名付けたものなんだ。 ミカ:へえ~、すごいね。ジベレリンは、日本人が見つけたんだ。  ほかに、植物ホルモンって使われているのかな。 おじさん:農業では、植物ホルモンという名前ではなく、植物成長  調整剤として色々な農作物で利用されているけど、果樹の分野で  言えば、オーキシン作用によるメロンのネット形成の促進、サイ  トカイニン作用による果樹の側枝、新梢の発生促進、果実肥大促  進、エチレン作用による果樹の熟期促進などがある。いずれも、  植物ホルモンの発見に始まり、どのような機能があるか様々な研  究が重ねられ、それをどう活用するかについて農業試験場などで  技術の実用化が進められ、その後、農家の皆さんに使ってもらえ  るようになった技術だ。 リン:ジベレリン処理による種なしぶどうのことは、どこかで聞い  たことがあるような気がするけど、どの技術一つとってみても、  技術の実用化までには、多くの人の努力と多くの時間がかかり、  様々な工夫が重ねられていることがよく分かった。もっともっと、  いい技術がたくさん実用化されるといいね。 ────────────────────────────── ■ 文献紹介:果物の摂取を増やす政策で、心血管疾患が大幅に減少  果物と野菜の摂取は、心臓病や脳卒中などの心血管疾患(CVD) の発症リスクを軽減するとのエビデンスが蓄積しています。そのた め、食事バランスガイドでは、果物を200g、野菜を350g摂取するこ とを推奨しています。しかし、国民健康栄養調査2016では、20歳以 上の成人では1日の消費量が、果物が98.9gで、野菜は269.4gと少な いことが分かりました(年齢調整済)。  一方、わが国では、心血管疾患は総医療費の20%以上を占めてい ます。今後、急速に高齢化する中で心血管疾患の医療費が増加する と予測されています。  そこで、国立こども医療開発センターなどの研究チームは、2060 年までの果物と野菜の摂取量を増やすシナリオを作成し、シナリオ ごとの心血管疾患の軽減効果を障害調整生存年数(DALYS:用語解 説)を用いて予測した結果を、「BMC公衆衛生」のオンライン版に 発表しました(2019年6月7日公開)。  研究では、2015年をもとに2030年、2045年、2060年についてそれ ぞれのシナリオを検討しました。シナリオ1)果物摂取の中程度の な増加(追加摂取量50 g /日または1/2 サービング); 2)果物摂 取量の大幅な増加(追加摂取量100 g /日または1 食分); 3)野 菜摂取量の中程度の増加(追加摂取量70 g /日または1 食分); 4)野菜摂取量の大幅な増加(追加摂取量140 g /日または2人前) としました。  研究の結果、2015年の果物消費不足に起因する心血管疾患の症例 は302,055症例、12.6%と推定されました。野菜の摂取不足に起因 するのは202,651症例、8 .5%でした。  2060年に果物の不十分な摂取による心血管疾患の症例は、中程度 の増加シナリオでは260,43症例、7.9%となり、大幅な増加シナリ オでは149,205症例、4.5%へと大幅に減少すると推定されました。 野菜は中程度の増加で179,417症例、5.4%となり、大幅な程度増加 では78,501症例、2.4%へと減少すると予測されました。  以上の結果から、果物と野菜の消費をわずかに増やすだけで、心 血管疾患を大きく軽減できると著者らは述べています。 【用語解説】 障害調整生存年数  障害調整生存年数(DALY/ダリ)は、1990年代初めにハーバード 大学のクリストファー・マーレー教授らが開発した指標で、障害の 程度や障害を有する期間を加味することによって調整した生存年数 のこと。 【文献】 Mo, X. et al.: Coronary heart disease and stroke disease burden attributable to fruit and vegetable intake in Japan: projected DALYS to 2060. BMC Public Health, 19: 707. (2019) Online 2019 Jun 7. [doi: 10.1186/s12889-019-7047-z] ────────────────────────────── ■ 文学の中の果物:ニュートン(石原純) 月も地球に落ちてくる  ニュートンがどうして万有引力を発見したかと云(い)うと、そ れにはいろいろな苦心が重ねられたので、林檎(りんご)の実の落 ちるのを見たぐらいで直(すぐ)にそんなすばらしい発見が出来る ものではありません。  林檎の実に限らず、どんなものでも地球上で支えるものがなけれ ば落ちるということは誰でも知っています。これを自由落下といい ますが、それに対する法則はニュートンよりも前に、イタリヤのガ リレイという学者が既(すで)に発見しました。ところで皆さんは、 何も支えるものが無いのに拘わらず、いつ迄(まで)経っても地面 に落ちて来ないもののあるのを知っていますか。何だかそう云うと 謎みたいに聞こえますが、それはつまり空に輝いている月です。月 は地球の周りを廻(まわ)っているのだということが、今でははっ きりわかっていますけれども、それにしても月はどうして地面に落 ちないのでしょうか。林檎は落ちるけれども、月は落ちない。これ が多分ニュートンの最初の疑問ではなかったのでしょうか。つまり 月を問題にしたところに、ニュートンの人並みすぐれた烱眼(けい がん)があったのです。  そこでニュートンは、はっきりとした論理を追究してゆきました。 林檎が落ちるならば、月もまた落ちなくてはならない。それなら月 は果してどんな速さで落ちているかを計算して見よう。これがニ ュートンの研究の出発点でありました。  これだけでは皆さんに月の落ちていることがまだよくわからない かも知れませんから、もう少し説明するとこういうことになるので す。野球の球を投げると、曲線を描いて遠方に落ちます。投げる力 が強ければ、強い程ほど遠くへゆくでしょう。大砲の弾丸でも同じ ことです。そこで仮に非常な強い力で弾丸を打ち出したならどこ迄 までゆくかと考えて見ましょう。この力をますます強くしたと考え れば、落ちる場処ばしょはだんだん遠方になり、例えば日本から打 ち出したものが支那(しな)迄までとどき、もっと強ければ支那を 超えてヨーロッパまでもゆき、ついにはそれも通り越してアメリカ にも達するという理屈です。実際にそんなことは出来ないにしても、 理窟りくつの上では確かにそうなるのに違いないので、つまり月は 非常な速さで投げ出されていると見れば、それは地球をぐるぐる廻 まわるけれども、結局それでも地面に届かないということになるの です。 ────────────────────────────── ■ くだものいちば  今回は、神戸市中央卸売市場本場に入荷している果物を紹介しま す。入荷量が多いのは、ニホンナシ、モモ、スイカなどです。秋を 告げる早生リンゴ「つがる」やカキが入荷しています。 [旬の果物と産地] ウンシュウミカンは愛媛産です。 レモンは高知産です。 ニホンナシ(幸水、豊水、二十世紀)は長野、徳島、鳥取産です。 リンゴ(つがる)は長野産です。 カキ(刀根早生)は和歌山産です。 モモ、ネクタリン、スモモは長野産です。 ブドウ(デラウェア、巨峰、ピオーネ、など)は山形、長野、山梨、 岡山産です。 メロン(アールス、など)は静岡産です。 スイカは長野産です。 「くだものいちば」は青果物市況情報を参考に作成しています。 https://www.seisen.maff.go.jp/seisen/bs04b040md001/BS04B040UC010SC999-Evt001.do ────────────────────────────── ■ 編集部より  今号で紹介した文献の著者らは、果物を選ぶ場合、女性は鮮度と 食品の安全性を懸念する傾向があり、男性は味覚選好に基づいて食 品を選択する傾向があると述べています。また、果物の消費が伸び ない理由に、生産者の高齢化による生産量の減少だけでなく、青果 物店の減少もあると指摘しています(2003年から2014年の間で半減)。                           (tnk)  前回の編集後記は、梅雨明けをお伝えしましたが、夏休みを一度 挟ませてもらったら、もう、わずかにではありますが、秋の気配が 近づいてきているようです。立秋も過ぎ8月も終わりです。そうは いっても、まだまだ、残暑が厳しく、特別に暑かった今年の夏の夏 バテも油断できません。こんな時は、美味しい旬の果物を冷やして 食べるのが一番です。(EK) ────────────────────────────── ◆発 行◆ 公益財団法人中央果実協会 kudamononews@kudamono200.or.jp Copyright(C) 2011-2019.  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