毎日くだもの200グラムメールマガジン □■ くだもの&健康ニュース Vol.166 ■◇ 2018年10月5日(金)配信 こんにちは。 今回は、栄養科学の歴史を通じて研究を主導した理論の変遷を紹介 しています。教科書が変わろうとしています。 ───────────────────────────── 毎日くだもの200グラム以上食べましょう! 公式ホームページは下記です。 http://www.kudamono200.or.jp ────────────────────────────── <<< 本日のメニュ− >>> ・ 季節の便り ・ くだものレシピ:カキ ・ 文献紹介:現代栄養科学の歴史と主導理論 ・ 文献紹介:果物を含む質の良い食事は脳の萎縮を予防 ・ 文学の中の果物:剣の四君子−高橋泥舟(吉川英治 ) ・ くだものいちば ・ 編集部より ────────────────────────────── ■ 季節の便り   澁柿やあら壁つゞく奈良の町     − 正岡子規 ────────────────────────────── ■ くだものレシピ:カキ ○ 久留米産柿のフルーツバーガー  柿とハンバーグは最高の組み合わせ! ひと味違ったハンバーガーを試してみては? 材料(2人分)  カキ 小1個+ソース用 1個、合い挽きミンチ 200g、玉ねぎ小玉 1個、卵 1/2個、バンズ 2個、レタス 2枚、生ハム 2枚、クリーム チーズ 100g、など。 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 https://cookpad.com/recipe/4818869 ○ サーモンとアボカドと柿のカルパッチョ  アボカドと柿をサーモンで巻いて野菜ブイヨンのソースをかけた カルパッチョ。この組み合わせの味と食感がたまりません! 材料(4人分)  カキ 1/2個、アボカド 1/2個、刺身用サーモン 8切れ分、野菜 ブイヨン、醤油、お酢、オリーブオイル、など。 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 https://cookpad.com/recipe/2427751 ────────────────────────────── ■ 文献紹介:現代栄養科学の歴史と主導理論  アメリカ、タフト大学などの国際共同研究チームは、どのように 現在の栄養理論が構築されたかについて、世界五大医学雑誌の一つ である「イギリス医学会雑誌(BMJ:2018 年6月13日発行)に発表 しました。  この論文では、1910年代から説き起こし、現代の栄養科学におけ る重要な歴史的出来事について述べるとともに、現代の食生活と健 康に関する基礎を形成している現代栄養科学について紹介していま す。  食物と栄養は何世紀にもわたって研究されてきましたが、現代の 栄養学は驚くほど若い学問です。この学問は、おおよそ100年前の 1926年に初めて単離されたビタミンの研究から始まり、その後半世 紀、ビタミン欠乏症などに対して大きな成果を収めました。この時 代を主導したのが「単一(あるいは複数)の栄養素欠乏」理論です。 この理論は、栄養素重視のアプローチに強力な先例を生み出しまし た。そして、この還元主義的アプローチは、非伝染性慢性疾患にも 拡大されました。  しかし、1990年代に高所得国を中心に急増していたガン、冠動脈 疾患、肥満、2型糖尿病など非感染性の食事由来の慢性疾患の予防 に対しては、「単一(あるいは複数)の栄養素欠乏」理論では説明 できないことが次第に明らかとなってきました。  2000年以降に研究が加速した最も重要な科学的発展は、コホート 研究(追跡調査)、無作為臨床試験、さらに最近では食事と遺伝子 の相互作用の研究です。コホート研究(追跡調査)では、単一(あ るいは複数の)栄養素や食品、および食事パターンと健康との関連 を個人レベルで解析できるようになりました。臨床試験では、単独 (あるいは複数)のビタミンサプリメントの影響や特定の食事パタ ーンの健康効果を精度良く判定できるようになりました。食事と遺 伝子の相互作用の研究では、食事の選択、疾患の危険因子およエン ドポイント(用語解説)に及ぼす影響などを解析できるようになり ました。  こうした進歩した研究方法を用いてガンや心血管疾患のエンドポ イントに対する特定のビタミンサプリメントなどの補充試験(例え ばβ-カロテン、ビタミンEなど)が実施されました。その結果、サ プリメントの投与で有害な事象が発見され、「単一(あるいは複 数)の栄養素欠乏」理論では説明できず、不十分な理論であること が分かりました。 この結果に対して専門家は、慢性疾患には「単一(あるいは複数) の栄養素欠乏」理論でのアプローチには限界があり、新しい方法論 的デザインが必要であると考えるようになりました。  「単一(パターン」あるいは複数)の栄養素欠乏」理論とは対照 的な、食品をベースとした総合的な食事全体のパターンを重視した 理論に基づく「地中海式食事」や「DASH食」(アメリカ、心肺血液 研究所などが開発)などが注目されています。これらの食品ベース の食事パターンは、一貫して有益な証拠が蓄積しており、非伝染性 慢性疾患に対する食事の効果を説明できることから、健康効果への 信頼性が高まっています。 この理論と効果の一致は、研究デザインの改善が行われたためと考 えられています。  具体的には、果物、野菜、ナッツ、豆、全粒粉、植物油などが豊 富で、加工食品や、砂糖、塩を最小限に抑えた食品をベースとした 食事パターンの理論が現在の栄養科学の主導的な理論となっていま す。  栄養科学の歴史において、最初は、実用的利益を達成する合理的 かつ単純化された「単一(あるいは複数)の栄養素欠乏」理論を導 きだし、初期の大きな成果を納めました。しかし、研究が進むにつ れて必然的に複雑な生態システムの解明に進むのは、過去の教訓で もあります。例えば、臨床医学、物理学などの科学的進歩において も同様の過程を経ていると研究者らは述べています。 【用語解説】 エンドポイント  エンドポイントとは、ガンや心臓病、肥満などの治療や予防の効 果の最終評価(真の評価)のことで、ヒトを対象とした臨床試験な どでのエンドポイントは、治療や予防の目的に合っており、なおか つ、客観的に評価できることが必要です。そのため、「死亡率の低 下」、「疾患の発症率の低下」、「副作用の低減」などが真のエン ドポイントとなります。しかし、それらを治験の期間内で評価する ことは難しい場合があるため、血糖値、血清脂質値、腫瘍サイズ、 血圧などが代用エンドポイント(マーカー)として採用されること もあります。しかし、代用エンドポイントが、いつも真のエンドポ イントを予測する優れた評価指標であるとは限らない場合もありま す。 【文献】 Mozaffarian, D. et al.: History of modern nutrition science-implications for current research, dietary guidelines, and food policy. BMJ, 361: k2392. (2018) [doi: 10.1136/bmj.k2392] ─────────────────────── ■ 文献紹介:果物を含む質の良い食事は脳の萎縮を予防  オランダ・エラスムス大学医療センター等の研究チームは、果物、 野菜、ナッツ、魚が豊富な食事は、脳の容積を増やすと「神経学」 に発表しました。  同チームの先行研究において脳の容積が縮小すると認知機能が低 下することを解明しました。そこで、本研究では、脳の容積と食事 との関係について調査しました。  認知症の既往症がないオランダ人4,213人(平均年齢66歳)を対象 に、食事の質と脳の容積との関係を調査しました。食事の質は、オ ランダの食事ガイドラインの食品群に基づいてスコアで評価し、脳 の容積は脳MRIスキャンによって調べました。  その結果、食事の質が良いと、脳の容積が大きいことが明らかに なりました。同時に、灰白質容積、白質容積、海馬容積も大きい傾 向にあることも分かりました。  具体的には、果物、野菜、全粒粉、ナッツ、乳製品、魚の摂取が 多く、砂糖入り飲料が少ない食事をしていた人は、脳の容積が大き いことが分かりました。また、脳容積は、特定の食品群が関与して いるのではなく、食事全体の総合的な質が重要なことが分かりまし た。  先行研究で脳容積が大きい人は、より優れた認知能力を維持して いることから、果物を含む質の良い食事に改善することは、高齢者 の認知能力維持に有効であると研究者らは考えています。 【文献】 Croll, P.H. et al.: Better diet quality relates to larger brain tissue volumes: The Rotterdam Study. Neurology, 90: e2166-e2173. (2018) [doi: 10.1212/WNL.0000000000005691]. ────────────────────────────── ■ 文学の中の果物:剣の四君子−高橋泥舟(吉川英治 )  熟(う)れた柿が落ちている。何のことから始まったのか、柿の 木の下で、兄弟は取っ組み合っていた。  小さい謙(けん)三郎は、手もなく、兄の紀(き)一郎に投げつ けられて、強(したた)かに背を大地へ打ちつけた。 「よくも投げたな」  恥辱だと思うのだ。武士の子だ。転(まろ)びながらも歯軋(は ぎし)りして、兄の足へしがみつく。 「まだ懲(こ)りぬか」  紀一郎は振り放す。小癪(こしゃく)な弟は、喰い下がって離れ ない。そしてまた組む。また勢いよく叩きつけられる。  妹の英(ふさ)子は泣き出して、 「――母(か)あ様、母あ様」  と、奥へ急を告げる。  書院の破(やれ)障子が開いて、立ち出でたのは、兄弟の母でな くて、父の山岡市郎右衛門であった。 「また喧嘩かっ。紀一郎、大きなくせに、止めんか。謙三郎、弟の 分際で、兄上に対し、何たることか」  この一喝(いっかつ)で、兄弟は立別れ、やがて半刻(とき)も お談義(だんぎ)を喰う。母の文子が来て詫(わ)びる。おまえの 躾(しつ)けが悪いからだと母までも叱言を聞く。幼い英子までが 一緒に泣いて謝(あやま)りぬく。女の子の可憐(いじら)しさに はかなわぬといった風で、市郎右衛門は、 「泣くな、もうよい」  と、英子を宥(なだ)めることに依って、一先ず母も兄弟も、以 後を誡(いまし)められてやっと許される。  旗本といえば歴乎(れっき)と聞えるが、幕臣山岡家は微禄(び ろく)だし豊かでなかった。庭の草も茫々、障子の貼代(はりか) えも年に一度を二年越しに持たせたりしている。唯、そんな家庭に も絶えず旺(さかん)な物音がある所以(ゆえん)は、元気な男の 子二人のためだった。兄の紀一郎がことし十五。弟のなかなかきか ない方が、やっと九歳で、通称謙(けん)三郎、字(あざな)は寛 猛(ひろたけ)、後に養家の高橋姓に改めて、伊勢守となり、泥舟 (でいしゅう)と号した人である。 ────────────────────────────── ■ くだものいちば  今回は、札幌市中央卸売市場に入荷している果物について紹介し ます。入荷量が多いのは、ウンシュウミカン、ブドウ、リンゴ、ナ シ、カキ、バナナなどです。 ウンシュウミカンは和歌山、高知、佐賀産などです。 レモン、バレンシアオレンジはアメリカ産、グレープフルーツは南 アフリカ産です。 リンゴ(つがる、など)は北海道、青森産です。、 ニホンナシ(豊水、新高、など)は秋田、茨城産です。 セイヨウナシ(バートレット)は山形、青森産です。 カキ(平核無、刀根早生、など)は和歌山、奈良産です。 スモモ(プルーン)は北海道産です。 ブドウ(巨峰、キャンベルアーリー、ナイアガラ、など)は福島、 長野、北海道産です。 メロン(キングメルティ、など)は北海道産です。 バナナはフィリピン、エクアドル産です。 パイナップルはフィリピン産です。 キウイフルーツはニュージーランド産です。 「くだものいちば」は青果物市況情報を参考に作成しています。 https://www.seisen.maff.go.jp/seisen/bs04b040md001/BS04B040UC010SC999-Evt001.do ────────────────────────────── ■ 編集部より  「教科書を疑え」は、本年度のノーベル医学生理学賞を受賞した 本庶佑氏(京大特別教授)の言葉です。栄養科学の分野でも教科書 に記載されていたことが変わりつつあります。長いですが、文献紹 介「現代栄養科学の歴史と主導理論」を是非お読みください。(tnk)  秋分が過ぎ、日暮れが早くなってきて、やっとで秋の到来を実感 できるようになってきました。店頭にはかきやくりなど秋の果物 がたくさん並んでいます。これからが1年で最も果物が豊富な季節 です。「食欲の秋」を楽しみたいですね。(HK) ────────────────────────────── ◆発 行◆ 公益財団法人中央果実協会 kudamononews@kudamono200.or.jp Copyright(C) 2011-2018.  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