毎日くだもの200グラムメールマガジン □■□ くだもの&健康ニュース Vol.117 ■□■ 2016年9月9日(金)配信 みなさん、こんにちは! 「果物、飯、麺類はNG」の低炭水化物ダイエットの問題点、その第 三弾です。 ───────────────────────────── 毎日くだもの200グラム以上食べましょう! 公式ホームページは下記です。 http://www.kudamono200.or.jp ────────────────────────────── <<< 本日のメニュ− >>> ・ 季節の便り ・ くだものレシピ:クリ ・ 文献紹介:低炭水化物ダイエットの問題点−その3  −文献1:肉の摂取量が多いと死亡率が高い  −文献2:肉好きの若い女性は乳ガンのリスクが高い ・ 文学の中の果物:植物一日一題(牧野富太郎) ・ くだもの広場:博士が応える果物の不思議(シャインマスカット編) ・ くだものいちば ・ 編集部より ────────────────────────────── ■ 季節の便り   怒る栗笑ふ栗皆落ちにけり    − 正岡子規 ────────────────────────────── ■ くだものレシピ:クリ ○ 秋の味覚♪栗と鶏肉の味噌煮  クリが入った食欲をそそる秋の香りの煮物です。トリ肉とクリを 一緒に口に入れると、歯ごたえも味も何とも言えないおいしさ! 材料(4人分)  むきグリ 10粒、干しブドウ 大さじ2杯、長ねぎ 1/2本、絹さや 3枚、鶏もも肉 1枚、酒 大さじ2杯、減塩味噌 大さじ2杯、みり ん 大さじ2杯、唐辛子(輪切り)、ごま油、など。 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 http://cookpad.com/recipe/4053748 ○ 鉄パンで焼き栗とししとうの焼きうどん  食べ物的にはそろそろ秋の季節になってきたのかな。そう言えば 手元に焼きグリがあったので、これで焼きうどんを作ってみたよ。 材料(1人分)  天津甘栗(焼き栗) 1パック・65g、シシトウ 5本、細うどん(200g) 1玉、ホットオイル 適量(多い目)、おろしニンニク 大さじ1杯、 など。 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 http://cookpad.com/recipe/4054177 ────────────────────────────── ■ 文献紹介:低炭水化物ダイエットの問題点−その3  ご飯やうどんなど麺類の完全非摂取だけでなく、果物やニンジン、 ポテトサラダなどもすべてNGとして、極端に炭水化物の摂取量を減 らす一方で、肉などの摂取を勧めるとともに、調味料として食塩の 使用を奨励するダイエット法が流行しているようです。この食事法 は、低炭水化物ダイエットとして知られています。  一方で、私たちが推奨している適切な量(55%前後)の炭水化物 を摂取する食事バランスガイドや地中海式ダイエットで代表される 脂肪の摂取量を減らし、果物と野菜の摂取量を増やすダイエット (推奨炭水化物ダイエット)があります。今号では、肉食の問題点 を指摘している論文を2編紹介します。 ◆文献1:肉の摂取量が多いと死亡率が高い  アメリカ、メイヨークリニックの研究チームは、150万人以上を 対象とした大規模疫学研究の再解析を行い、赤肉や加工肉の摂取が 多いと死亡率が高まると、「アメリカ・オステオパシー学会誌」に 発表しました。  論文を執筆した医師は、科学的根拠に基づく臨床での食事指導を 目的に、「肉食」と、ナッツ、豆類、果物、野菜などの「菜食」の どちらが死亡率に与える影響が大きいかを評価した6件の研究を解 析しました。  100万人以上を対象とした5.5年から28年間の追跡調査から、未加 工の赤肉(牛肉、豚肉、ラム)と、加工肉(ベーコン、ソーセージ、 サラミ、ホットドッグ、ハム)の摂取は、アメリカとヨーロッパに よるわずかな差異は見られたものの、肉の摂取量が増加するのに伴 い急激に死亡率が上昇することが見いだされました。  150万人以上を対象とした心血管系疾患および虚血性心疾患と肉 摂取との関係を解析した研究では、加工肉の摂取が死亡率を統計的 に有意に高めることが分かりました。  50万人以上を対象とした研究では、肉の摂取量が極めて少ない人 は、死亡リスクが25-50%低いことが分かりました。  さらに、17年以上菜食を継続している人々は、短期の菜食者に比 べて、寿命が3.6年延びることも明らかとなりました。  以上の結果から、「医師は患者に可能であれば動物性食品の摂取 を制限し、植物性食品を多く摂取することを推奨すべき」と、論文 の筆者である臨床医は述べています。 【文献】 Fields, H. et al.: Is Meat Killing Us? J. Amer. Osteop. Assoc., 116: 296-300. (2016) [doi:10.7556/jaoa.2016.059] ◆文献2:肉好きの若い女性は乳ガンのリスクが高い  アメリカ、ハーバード大学の研究チームは、若い時代に赤肉(牛 肉、豚肉など)の摂取が多いと乳ガンの発症リスクが高まると、 「イギリス医学雑誌(BMJ)」に発表しました。  研究では、女性看護師健康研究IIの参加者88,803人を対象に20年 間追跡調査が行われました。食事調査における未加工赤肉は、牛肉、 豚肉、ラム、ハンバーガーとし、加工赤肉はホットドッグ、ベーコ ン、ソーセージとし、異なる食事をする女性の乳ガンの発症リスク を推定する統計モデルにより解析を行いました。  その結果、赤肉の摂取頻度が少なかった(1日平均0.14サービン グ)20〜30歳代の女性と比較して、赤肉の摂取量が多かった(1日 平均1.5サービング)20〜30歳代の女性は、乳ガンの発症リスクが2 2%高いことが分かりました。また、赤肉の摂取が、1日1品目増える ごとに発症リスクは13%高まりました(閉経前女性で12%、閉経後女 性で8%)。  一方、タンパク質の供給源であるトリ肉を良く食べる閉経後女性 では乳ガンの発症リスクが低くなりました。1日1品の赤肉の代わり に1品のトリ肉を摂取すと全体の乳ガンのリスクは17%低下しました。 閉経後の女性に限定すると24%の低下が認められました。また、タ ンパク質の供給源であるナッツ、豆類、魚介類でも同様な効果が認 められました。  以上の結果から、若いころ(20代〜30代)の赤肉の大量摂取は、 乳ガンのリスク因子であることが明かとなりました。しかし、赤肉 に代えて良質なタンパク質源である豆類、ナッツ、トリ肉、魚介類 を食べることでリスクを下げることが出来ると、研究者らは述べて います。ただ、最終的に結論づけるには、さらに解析が必要である としています。 【文献】 Farvid, M.S. et al.: Dietary protein sources in early adulthood and breast cancer incidence: prospective cohort study. BMJ, 2014: 348. (2014) [doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g3437] ────────────────────────────── ■ 文学の中の果物:植物一日一題(牧野富太郎) 栗とクリ  「栗は日本になくクリは中国にない」。こう書くと誰でも怪訝な 顔して眼をクリクリさせ、クリはどこにもあるじゃないかという。 その通りクリは日本のどこにもあるが、しかし栗は日本のどこにも ない。けれども漢和字典のようなものを始めとして、いろいろの書 物にみな栗をクリとして書いてあるではないかと言い張るだろう。  ところが元来栗というのは中国産のもので、今それを学名でいえ ば Castanea mollissima Blume であり、西洋での俗名は Chinese Chestnut であって、あの町で売っているいわゆる甘栗がすなわち それである。この栗は少しは今日本に植えられているようだが、し かしまだ日本でなった実が市場に出ることはなく、そして出るほど 多量な実は今日日本では稔らない。それは畢竟その樹を大量に植え ないからである。しかしこの栗は通常日本ではなかなかに実の着き が悪いといわれる。  私の庭にこの支那栗の樹が一、二本ばかり成長を続けている。そ の一本へ今年初めて花が咲いたが、ついに実がならずにすんだ。そ の樹の本の方は直径は一方のものは五寸、一方のものは六寸五分あ って、この太い方へ花が着いた。この支那栗はその幹の様子、葉の 様子も無論大体は似ているが、日本のクリとは異なって嫩い幹は滑 かであり、葉の広いものはその幅およそ三寸五分もあり、初めは裏 面も緑色だが、後にはそれが白色を呈する。つまり非常に細かい白 毛が密布するのである。この私の庭の木は前年市中で生の甘栗を買 い来って播種したものである。今日でも大きく成長を続けてはいる が、依然として一向に実が生らない。  土佐に傍士栗ボウシグリ(私はこれを特にボウシアマクリと称え る、何となれば別にボウシグリという名があるからだ)というのが つくられている。傍士駒市という人がセレクトした品種で実が大き い、すなわち支那栗の優品で、私はこの学名を Castanea mollissima Blume (以下の学名略) と極めた。この一本が今私の庭に健全 に成長している。その栗毬は大形で堅果も大きい。  支那栗すなわちアマグリは実の渋皮がむけやすく味が甘いのが特 徴である。日本のクリとこの支那栗とをかけあわせてその間種をつ くってみたら利益があることと思うが、もうどこかでその見本樹が 出来ているかも知れない。  日本のクリはその学名は Castanea crenata Sieb. et Zucc. で、 西洋での俗名は Japanese Chestnut である。そしてクリの語原は 黒い意味でその実の色から来たもんだ。これは日本の特産で中国に はない。ゆえに中国名の栗の字をもって日本のクリそのものとする ことは出来なく、クリはいつまでもクリで、中国の栗の字をもって 日本のクリにあてることは正しくない。しかるに従来の学者はそん なイキサツのあることは知らないから、栗の字を日本のクリへ適応 して平気でいるが、それは全く勘違いだから、栗の字を日本のクリ から絶縁さすべきだ。そして日本のクリは仮名でクリと書きかつそ う呼べばそれでよい。 ────────────────────────────── ■ くだもの広場:博士が応える果物の不思議(シャインマスカット編) ミカ:博士、近頃スーパーでもよく見かける「シャインマスカット」    という緑色のブドウを知っていますか?    種が無くて、皮ごと食べられ、美味しいんです。特に、香りが    ちょっと他のブドウと違うんだよね。 博士:香りによく気がついたね。あの香りが、マスカットの香りだよ。 リン太:ガムやキャンデーなどにマスカット風味というのがあるけど、    これが本物のマスカットの香りなの? 博士:マスカットの香りのするブドウは、日本ではほとんど栽培されて    いないんだ。昔から「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と    言う、舌をかみそうな名前の品種が岡山県を中心に栽培されてい    るけど、日本では作るのが難しく生産量も少ないので高級品だね。 ミカ:どうして、栽培が難しいの? 博士:ブドウの種類は、大きく分けてヨーロッパ原産の欧州ブドウと北    アメリカ原産の米国ブドウがあるんだ。マスカットの香りは欧州ブ    ドウだけが持っているんだけど、雨の多い日本では、欧州ブドウは、    病気が発生しやすく、果実も割れてしまったりするので、日本での    栽培は難しいんだ。「マスカット・オブ・アレキサンドリア」は、    岡山県でガラス温室で栽培されているんだよ。 ミカ:米国ブドウってどんなブドウなの? 博士:雨の多い日本で広く栽培されてきたのは、米国ブドウなんだ。「デ    ラウェア」(小粒の赤いブドウで種無しで販売されることが多い)、   「キャンベルアーリー」(中粒の黒いブドウ)などが代表的な品種で、    病気や果実の割れに強く、明治以来、日本での主流品種だったんだ。    ただ、粒が比較的小さく、噛み切りにくい肉質で、マスカットとは    違った特徴ある香り(フォクシー香)なんだ。 リン太:じゃあ、マスカット香の「シャインマスカット」は欧州ブドウ? 博士:昔から、米国ブドウと欧州ブドウを交配して、「巨峰」や「ピオー    ネ」などの品種を作ってきたんだが、「巨峰」や「ピオーネ」も    フォクシー香で、欧州ブドウのような香りや噛み切りやすさは得ら    れなかったんだ。でも、交配を長い間粘り強く続け、肉質が「マス    カット・オブ・アレキサンドリア」に近く、マスカットの香りがあ    り、普通の畑でも栽培できる大粒な黄緑色ブドウを選抜し、日本の    果樹の研究機関が「シャインマスカット」として発表したんだ。 ミカ:欧州と米国の両方の良いところを取り入れたいと頑張ったんだね。 博士:日本の消費者の「種無しで皮のままでも食べやすく」、「美味しい」    という要望とブドウ農家の「作り易さ」という両方のニーズに応え    て頑張ったんだ。もう少し皮が薄くなると割れてしまうし、少しで    も厚いと皮のままは食べられない。ちょうど良いものが得られたん    だね。このような育種は、長い年月がかかり、何種類もの交配組み    合わせと選抜が必要なんだね。国立の研究機関ならではの研究成果    といえるだろうね。 ミカ・リン太:このおいしさを、品種を育成した人の苦労に感謝しながら、    味わいたいね。 ────────────────────────────── ■ くだものいちば  今回は、鹿児島市中央卸売市場に入荷している果物について紹介 します。入荷量が多いのは、ニホンナシ、リンゴ、スイカ、バナナ などです。 ウンシュウミカンは鹿児島、佐賀産です。 レモンはチリ産、バレンシアオレンジはオーストラリア産、グレー プフルーツは南アフリカ産です。 リンゴ(つがる)は長野産です。 ニホンナシ(豊水、二十世紀、あきづき)は大分、鳥取、熊本産です。 モモ(ゆうぞら)は福島産です。 ブドウ(巨峰、ピオーネ、など)は福岡、岡山、熊本産です。 メロン(アールス、など)は熊本、青森産などです。 スイカは鹿児島産です。 バナナはフィリピン産です。 パイナップルはフィリピン産です。 キウイフルーツはニュージーランド産です。 「くだものいちば」は青果物市況情報を参考に作成しています。 https://www.seisen.maff.go.jp/seisen/bs04b040md001/BS04B040UC010SC999-Evt001.do ────────────────────────────── ■ 編集部より  ギリシャ・ローマ時代から肉食の問題が何度も取り上げられてき ました。そうした長い医科学研究の歴史の結論が、「果物・野菜中 心の雑食が最適」です。ただ最近、炭水化物を食べないダイエット について多くの質問を受けます。テレビCMの影響が心配です。(tnk)  台風の連続で不安定な天候が続いており、北海道・東北を中心に発 生した大雨の被害も心配されます。これからの台風シーズン、平穏を 祈ります。果物売り場にはリンゴも出回り始め、我が家では、1週間 のうち梨が4日、リンゴが2日、ブドウが1日といったところです。 柿や栗はもう少し先のお楽しみですね。(KM) ────────────────────────────── ◆発 行◆ 公益財団法人中央果実協会 Copyright(C) 2011-2016.  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