毎日くだもの200グラムメールマガジン □■ くだもの&健康ニュース Vol.192  ■◇ 2019年10月25日(金)配信 こんにちは! 今号では、シルクロードと果物の密接な関係についての新しい研究 を紹介しています。 ───────────────────────────── 毎日くだもの200グラム以上食べましょう! 公式ホームページは下記です。 http://www.kudamono200.or.jp ────────────────────────────── <<< 本日のメニュ- >>> ・ 季節の便り ・ くだものレシピ:ギンナン ・ 文献紹介:果物などが豊富な健康的な食事は腎臓病の予防に効果 ・ 文献紹介:果物の起源とシルクロードを介した伝播 ・ 文学の中の果物:秋の気魄(豊島与志雄) ・ くだものいちば ・ 編集部より ────────────────────────────── ■ 季節の便り   夕日照る時雨の森の銀杏かな     - 正岡子規 ────────────────────────────── ■ くだものレシピ:ギンナン ○ 銀杏、甘栗入り中華ちまき  作り置きにしておけば、いつでも食べられます。 材料(4人分)  ギンナン 10個、甘栗 10個、茹で筍 100g、干ししいたけ 小5 個、もち米 2合、胡麻油、醤油、みりん、酒、など。 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 https://cookpad.com/recipe/5547231 ○ 蓮根と銀杏のコロコロ炒め  レンコンの食感と甘み、ギンナンの鮮やかな黄色を楽しんで下さい 材料(4人分)  ギンナン 20個、レンコン 200g、ごま油、塩、ポン酢、ブラック ペッパー 作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。 https://cookpad.com/recipe/5441686 ────────────────────────────── ■ 文献紹介:果物などが豊富な健康的な食事は腎臓病の予防に効果  世界的に慢性腎疾患(用語解説1)の罹患率が増加しており、公 衆衛生上の問題となっています。そこで、オーストラリア、ボンド 大学の研究チームは、慢性腎疾患と食生活との関係について解析し た結果、果物などが豊富な健康的な食事パターンは、慢性腎疾患の 罹患リスクを30%減らせると、「アメリカ腎臓学会臨床雑誌」の10 月号に発表しました。  研究では、18件の報告(630,108人の成人、追跡期間に平均10.4 年)を対象にメタ解析(用語解説2)を行いました。解析に当たっ て健康的な食事パターンと定義したのは、果物、野菜、豆、ナッツ、 全粒穀物、魚介類、低脂肪乳製品が多く、赤肉、加工肉、ナトリウ ム、加糖飲料の摂取が少ない食事で、食物繊維、ビタミンC、ビタ ミンEを豊富に摂取している食事のことです。  研究の結果、果物などが豊富で健康的な食事パターンでは、慢性 腎臓病の罹患リスクが30%減少しました。また、アルブミン尿(用 語解説3)の罹患リスクは27%減少しました。  以上の結果から、果物などが豊富な健康的な食事パターンは、慢 性腎臓病とアルブミン尿の予防に有効であることが分かりました。  今回の結果は、地中海式食事、ダッシュ(DASH)ダイエット、ア メリカ食事ガイドラインなど、果物などが豊富な健康的な食事パ ターンの順守に健康上の利益があることを支持しています。 【用語解説】 1)慢性腎臓病  慢性腎臓病(CKD)とは、何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する場 合と定義されています。 症状が出現することはほとんどなく、蛋 白尿(アルブミン尿)や腎機能異常(eGFRの測定)により診断され ます。 2)メタ解析  複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、ま たはそのための手法や統計解析のことです。 3)アルブミン尿  糖尿病性腎症などの早期発見のマーカーとして、尿中アルブミン が指標として広く認識されています。 【文献】 Bach, K.E. et al.: Healthy Dietary Patterns and Incidence of CKD: A Meta-Analysis of Cohort Studies. Clin. J. Am. Soc. Nephrol., 14: 1441-1449. (2019) [doi: 10.2215/CJN.00530119] ────────────────────────────── ■ 文献紹介:果物の起源とシルクロードを介した伝播  シルクロードに関する今までの議論のほとんどは、絹などの東ア ジアの商品に焦点を当てていました。しかし、歴史的資料と現在の 考古学的データは、農産物も同様に重要な商品であることを示して います。特に、果物やナッツなどのより価値の高い農産物は、この 交換ルート経由して伝播したと考えられていますが、ほとんど研究 されていませんでした。  ドイツ、マックス・プランク人類史科学研究所などの国際研究 チームは、文化交流が最も盛んで、シルクロードの中心だったウズ ベキスタンのパミール山脈の麓のタシュブラクにある中世の遺跡か ら千年以上前の植物遺物を解析し、リンゴ、モモ、アンズ、メロン などの果物は中央アジアで栽培されていたことを見いだし、「プロ スワン」に発表しました。この研究は、果物やナッツの伝播に関す る最初の体系的な研究の一つです。  中世の遺跡から収集された古代の種子と植物の遺物は、千年以上 前シルクロードに沿って人々が栽培していた果樹で、リンゴ、ブド ウ、メロン、モモ、アンズ、クルミ、ピスタチオが含まれていまし た。  タシュブラクの中世の遺跡は、海抜2100mにあり、発見された果 物の多くが生育できない場所であるため、収集された果物の遺物は 低い標高の所から運ばれたと考えられました。また、こうした証拠 は新鮮な、あるいは乾燥した果物やナッツが中央アジアの市場バ ザールで売り買いされていたことを示しています。このことは、シ ルクロードの中央の都市が、果物の伝播に重要な役割を果たしてい たことを示しています。  最も初期の明確な考古学的証拠から、中国東部が起源のモモとア ンズは、ローマ時代にはすでに地中海周辺に存在していたことが分 かりました。同様に、地中海周辺で生まれたワイン用品種は、唐の 時代には栽培されていて人気の飲み物でした。  また、多くの経済的に重要な果物が中央アジア東部の山の裾野の 森林から生まれたことが示唆されています。たとえば、現代のリン ゴの遺伝形質の多くは、カザフスタン南東部のティエンシャンの野 生リンゴに由来しています。ピスタチオも中央アジア南部に起源が あることが分かりました。  今回の研究などから、中央アジアの緑豊かな山や谷は、過去5千 年にわたって多くの植物が栽培されており、ユーラシア大陸の東西 の果物など農作物の交換の仲介の役割を果たしていることが分かり ました。こうした研究から、私たちの食卓の上の果物など農産物は、 古代シルクロードと密接な関係があることが明らかとなりました。 【文献】 Spengler, R.N. et al.: Arboreal crops on the medieval Silk Road: Archaeobotanical studies at Tashbulak. PLoS One, 13: e0201409. (2018) [doi: 10.1371 / journal.pone.0201409] ────────────────────────────── ■ 文学の中の果物:秋の気魄(豊島与志雄)  秋と云えば、人は直ちに紅葉を連想する。然しながら、紅葉その ものは秋の本質とは可なりに縁遠いことを、私は思わずにはいられ ない。  楓の赤色から銀杏の黄色に至るまでのさまざまな紅葉の色彩は、 その色彩からじかに来る感じは、しみじみとした専念の秋の感じと は、よほど距っている。都会にいてはそうでもないけれど、一歩田 舎に踏み出してみると、山裾の木立の紅葉や、田畑の熟しきった黄 色い農作物や、赤々とさす日脚などは、それをそのまま抽出して観 ずる時には、寧ろ残暑に属すべきもので、真の秋の領域ではない。 試みに、吾々の住宅や居室を、それらの色彩の何れかで塗りつぶす としたならば、吾々の生活気分は、可なりに落付のないものとなる ことであろう。そしてこの落付のなさは、秋の頼りない気分とは、 全く別種のものである。  紅葉に秋の気分を与うるものは、紅葉のうちの活力の欠如である。 私は茲に、緑葉が何故に紅葉するかという、科学的の説明を持出し たくはない。ただ紅葉に活力のないことだけを云いたい。かりに、 野山の紅葉が、あのままの色彩で生々と生育する世界を想像してみ れば、それが秋の世界だとは誰も云い得ないであろう。活力のない 紅葉なればこそ、秋にふさわしいものとなる。秋の山野を冠する赤 や黄の色彩は、房々とした少年の金髪ではなくて、生活をしつくし た初老の人の赤毛である。  生活力のない紅葉は、一夜の冷風に散ってゆく。そしてこの落葉 こそ、本当の秋のものである。庭に散り落ちる桐の一葉から、林の 中に舞い落ちる無数の木の葉、または半ば霜枯れた野の草葉に至る まで、悉く秋の気分に濃く塗られている。かさかさと鳴る落葉を踏 んで林中の小径を辿る時、人は最も深く秋を感ずる。  何処からともなく流れ来る微風に、常緑樹の病葉や落葉樹の紅葉 は、何等の努力もなく如何にも自然に、梢から地上へと舞い落ちる。 地のものは地へと大自然の声が囁く。而も地面へ落ちついた枯葉は、 なお其処に安住し得ないで、何処ともなく風のまにまに吹き散らさ れる。その方向を辿って林から出れば、収穫後の広々とした田畑が、 露わな肌を眼の届く限り展べていて、霜枯れの叢からは、実をつけ た雑草の茎が、淋しげにすいすいと伸びている。そして人の心も、 己自身の肌寒い淋しさに駆られて、遠い地平線のあたりへとさ迷い 行く。その地平線の彼方には、淡い夢のような憧れの世界がある。 ────────────────────────────── ■ くだものいちば  今回は、仙台市中央卸売市場に入荷している果物を紹介します。 入荷量が多いのは、ミカン、リンゴ、カキ、バナナなどです。 [旬の果物と産地] ウンシュウミカンは熊本産、レモンはチリ産、グレープフルーツは 南アフリカ産です。 リンゴ(つがる、ジョナゴールド、早生ふじ、王林)は青森、福島 産です。 ニホンナシ(新高、など)は宮城、福島、栃木産です。 セイヨウナシ(ラフランス)は山形産です。 カキ(平核無、刀根早生、など)は和歌山、奈良産です。 ブドウ(巨峰、シャインマスカット、など)は福島産です。 メロン(アールス、ハネジュー、など)は茨城、アメリカ産です。 バナナ、パイナップルはフィリピン産です。 キウイフルーツはニュージーランド産です。 「くだものいちば」は青果物市況情報を参考に作成しています。 https://www.seisen.maff.go.jp/seisen/bs04b040md001/BS04B040UC010SC999-Evt001.do ────────────────────────────── ■ 編集部より  先日、中央果実協会と東京農大共催の食育セミナーで話をする機 会がありました。狩猟採集の時代の人々の健康状態に関する最新の 科学分析の結果から現代の健康と食生活に関する最先端の研究まで レクチャーしたところ多くの学生から質問がありました。果物の良 さをアッピール出来たのではないかと思っています。(tnk) ────────────────────────────── ◆発 行◆ 公益財団法人中央果実協会 kudamononews@kudamono200.or.jp Copyright(C) 2011-2019.  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